奇妙な店長の戯言部屋

百合好きオタによる妄想と百合の戯言な日々

白い薔薇の淵まで(中山可穂)


白い薔薇の淵まで (集英社文庫)

白い薔薇の淵まで (集英社文庫)


<あらすじ>
「その本、買わないんですか?」
雨が降る深夜の本屋で、知らない女性に声をかけられた。それは、ジャン・ジュネの再来とまで言われた作家・山野辺塁と、ふつうのOL・川島とく子の出会いだった。わがままで自分勝手で野性的な塁に、クーチはいつも振り回され、幾度も修羅場を繰り返した。だが、別れてはまた求め合う。離れようとしても離れられない。二人はどこまでも落ちて行った。しかしある日、クーチは塁との別れを決意する。それは家族のための決断……。




以下ネタバレ

                                      • -

もう二度とあんな激しい恋はできない。



中山可穂さんの作品の中で一番人気の作品(噂
破天荒な性格の女性に振り回されて、離れることも出来ずに溺れていく。
中山さんの作品ではよくあるパターン。
そうわかっていても、どんどん引き込まれてしまうんですよね。





「その本、買わないんですか?」
そう声をかけられ、目で好きだと言われ、全身で欲しいと言われる。
そして恋に落ちる。




離れることなんて出来ない。
裏切ることなんて出来ない。
そう思っていたのに、父親の死が間近に迫り、孫の顔を見せてやりたいと思ったとき、
最悪の別れを、最悪の裏切りをしなければならなくなった。



「わたしやっぱり結婚したい」
この言葉に勝ち目がないの、不倫と同性愛だけだろう。




そうして別れたふたり。




しかし偶然にも再会してしまったふたりは、お互いを求め合わずにはいられなかった。
この世の果てまで落ちていくふたり。
そして。。。




一生に一度の快楽は、破滅へと向かっていく。






中山可穂さんの作品で一番読んでて苦しい作品です。
ただ幸せになりたいだけなのに上手くいかない。
愛して愛して愛し過ぎるから傷つけてしまう二人。



中山さんの作品の中で、一番人気があるのにも納得できます。
そんなに厚くないのに、かなり濃厚にできています。
こんなにも人を好きになったことがあるだろうか。
こんなにも人を求めたことがあるだろうか。


この二人の恋愛を語るのは難しい!
もう!とりあえず読んでみてください!
とっても甘くて、とっても苦い作品です!






amazonのレビューを読むまで気づかなかったんですが、
始まりニューヨークにいたクーチと、ラストの塁のもとへ自転車を走らせているクーチの矛盾が、
クーチのこれからの人生を想像させます。



中山可穂さんの小説は性描写が激しく、最初に読んだときはそちらに気が行ってしまうんですが、
いろんな本を読んで、自分の中にいろんなものが出来てから読み返すと、
胸が苦しくなる作品となります。




中山さんの表現がすごく好きなんですよね。
どうしてこんなに素敵な言葉が出てくるんだろうって思ってしまいます。



肝心なのは宇宙の果てで迷子になったとき、誰と交信したいかということだ。



もう、その人しかいないって感じですよね。
ものすごく乙女っちく。
だけどものすごく大人の小説です。