奇妙な店長の戯言部屋

百合好きオタによる妄想と百合の戯言な日々

花のもとにて(堀田あけみ)・2回目


花のもとにて (角川文庫)

花のもとにて (角川文庫)


<あらすじ>
憧れの先輩・大沢に近づきたくて、同じ心理学の大学院に入学した響子。大沢と同じ部屋になりたかったが、実際になったのは大沢の恋人・亜々子のいる部屋。響子は、いつもからかうようにしゃべる亜々子のことが嫌いだった。しかし、大沢が事務の杉原を好きになり始めた頃から何かが狂い始める。一途に愛を求めボロボロになっていく亜々子に、次第と響子は……。




以下ネタバレ

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前回読んだのも今ぐらいの季節。


やっぱり、間を置いて読むと、ちょっと感想が違いますね。



前回は、大沢に自分のすべてを掛けてしまうほどの価値はまったくないと思って読んでたんですよ。
(今も大沢への評価は変わらないですけど。)
でも、価値とかなんとかじゃないんですよね。
他人からどう思われようが、亜々子にとって大沢が世界なんですよ。



その世界がなくなり、一人ぼっちになってしまう恐怖。


今だったらなんとなくわかります。
世界に置いていかれるくらいなら、自分の命なんていらない。
その人以外に、この世に自分の命を繋ぎ止めておいてくれる存在なんていない。
両親が死んで、支えてくれた恋人が死んだ。
大沢以外、誰もいない。誰もいらない。






願はくは 花のもとにて春死なん あの如月の望月のころ


花の下で死にたい。
共感しちゃいけないんですが、
見上げるとそこには満開の金木犀が。そしてその向こう側には銀色の星が。
そんな風景を最後に見れたら最高だろうな、などと思ってしまいました。



でも、できるなら響子と生きる道を選んでほしかったです。
亜々子と同じような狂気の芽を含ませていた響子と。
いや、狂気を含ませようとした響子と。



響子の気持ちに応えることが出来ずに苦しんでいた亜々子。
想われるというのもけっこう辛いんですね。





緩やかに壊れていった亜々子。
後半の展開は本当にすごいものでした。




「あれは、私の愛した女性が、この世で一番愛した男。」
 誰にも渡さない。



響子には亜々子の代わりとして、大沢のそばにいてほしいですね。
絶対に好きにはならず、笑わず、心を開くことなく。
大沢のそばにずっといたいと思った亜々子の願いを叶え、亜々子を奪った大沢を許すことができない響子の想いのために。





誰かを死ぬほど愛したことはありますか?


そんな恋愛に憧れても、こんな風になってしまうなら、杉原くらいの恋愛がちょうどいいですね。
あそこまで図太くは生きられませんけど。