奇妙な店長の戯言部屋

百合好きオタによる妄想と百合の戯言な日々

映画「リメンバー・ミー」を見て私事ですが

映画『リメンバー・ミー』の中で、「生きている人に忘れ去られたとき、死んだ人間の二度目の死が訪れる」みたいなことが描かれていました。



最近はこの話を全然してなかったんですが、私は12才のときに父親が病気で亡くなっています。
私が10才のときに肺に癌が見つかり、2年の闘病生活の末に亡くなりました。
6年生の夏のことです。
父親は45才でした。
(意図してなかったんですが、そういえば今日は父の誕生日です。生きていたら66才になってました)



45才って長生きした方じゃないのかなぁと子供心に思ってたんですが、社会に出て、45才くらいの先輩達を見たら、まだまだ若いんですよね。
父親はこんなに若くして亡くなったのかと、社会人になるまで分かりませんでした。
そして、12才の自分は充分父親との時間を過ごせたと思っていましたが、12才はまだまだ子供でした。



生きている人に忘れ去られたときが二度目の死だと『リメンバー・ミー』では言ってました。
大切な人を忘れることなんてないだろうって思ってたんですが、長生きすると忘れたくなくても記憶から抜け落ちてしまうんですよね。
正直、私も父親のことをどのくらい覚えているのか不安です。
うちはビデオがなかったので、残ってるのは写真のみ。
どんな声だったろうか、どんな笑い方をするんだったか、見上げた背はどのくらい高かったんだろうか。
正直あまりはっきりとは思い出せません。
思い出も、写真としての記憶になってしまっていて、本当に自分の記憶なのかどうかも不安になります。



12才の私にとって、父親はまだ父親でしかなく、いち個人としてはどんな人だったのかも知りませんでした。
父親は何が好きで、何が嫌いだったのか。
20才になったら一緒にお酒を飲むんだと楽しみにしていました。
たくさん話がしたかったです。



父親のことを思い出そうとすると、どうしても最後の日を思い出してしまいます。
一学期の終業式の日、先生に呼ばれて病院に行った。
容態が安定したので一度家に帰り、夜中に病院にいる母親から呼ばれて、泊まりに来ていた親戚一同と4才上の兄と一緒に病院に行った。
みんなのいる前で母が取り乱し泣いていて、母が壊れたと思った。
私はそのとき「自分が母親を支えよう。父親の代わりになろう」と考えてました。
大人になってから母から聞いたのは、取り乱してるときに私の顔がちらりと目に入り、とても不安がっていて「私がしっかりしなくては」と思ったそうです。
それが失敗だったのかなぁと今は思っています。
お互いがしっかりしないとって気張りすぎたせいで、私達家族は家族の前で泣けなくなりました。
その日から私達は家族ではなくなり、同じ家に住む個人になりました。
運命共同体とでも言うんですかね。同志かな。



泣かなくなったと言っても、葬儀の時はボロ泣きしてました。
泣いているという感覚はなく、ただただ涙が溢れてきました。
体の半分を持っていかれたような喪失感があり、頭は冷静で、涙だけがボロボロと出てきてました。
ほんとに体の半分が真っ黒になったような、何もないような気持ちでした。



父親の記憶を忘れたくないのに、思い出せるのが死んだ後のことばかりです。
49日の間だったと思いますが、夢の中で父親から電話があり「風呂は嫌いなんだけど、入りたくないんだけど、風呂に入りたい」みたいなことをぼそぼそと言っていました。
後日、夢で父親が出てきたと母親に言ったら、「ああ、そういえばお母さんお風呂に入ってるときになんとなくお父さんの気配を感じた。無意識に浴槽の半分を開けて、お父さんが入れるスペースを作ってた」と言っていました。
父はお風呂に入れたみたいでよかったです。



死んだ人が夢に現れるときは顔が見えないんだと母が言っていました。
どこの情報だが聞きたいですが、夢の中で何度か父親が出てきてもいつも顔が見えなかったので、あながち嘘じゃないかもしれません。



まっ白な病室に父親が入ってきて、小さい私は父親に抱きつきます。
でも夢の中の父親は顔が見えません。父親だと確信はしてるんですが。
「お父さんだ。お父さんだ。なんて幸せなんだろう。すごく幸せだ」と夢の中の私は思います。
そこまで父親っ子でもなかったんですが。
そしてふと「これは夢だ」と気が付きます。




私は子供を作る予定もありませんし、いまさら子供が出来たからと言って父親の記憶を引き継げるもんでもありません。
私や兄、母、親戚が亡くなったときに父親ももう一度亡くなってしまうんでしょうか。
出来ることなら一日でも長く生きてほしいです。



あ、ここまで長々と書いてましたが、日本は輪廻転生の思想ですよね。
もうこの世に生まれ変わってるかもしれません。
そうだといいな。
今度こそ長生きしてほしいです。