ダンボールボートで海岸(千頭ひなた)
- 作者: 千頭ひなた
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/01/05
- メディア: 単行本
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<あらすじ>
出て行った母が残したローンを払うために適当に働いてるボク。たまに中学時代の元同級生・シモムラ相手に体を売ったりして生活している。そんなある日、自称アーティストのハナが、家出をしたとボクの家に転がり込んできた。そして深夜の自販機の前で知り合った、女装趣味のあるクロもボクの家に遊びに来るようになる。家庭にほんの少しだけ問題のあるボクたち。考え方も感じ方もそれぞれ違って……。
以下ネタバレ
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第二十七回すばる文学賞受賞作。
148ページとちょっと短いです。
内容も、独特の自分の世界を持っているやる気のない主人公と、その周りの人たちの交流といった感じの今どきの作風です。
文庫化はされてません。でも、文庫化したとしてもハードカバーの方を買ってもらいたいですね。ダンボールみたいな特殊な紙で作られたカバーは、手にとってもらいたい。表紙の写真の紫ぐあいもナイス!
店長の中の「好きな表紙ベスト」の上位にきますねw
内容の感想としては、さっきも言ったように、少しズレた世界を持ったちょっと病んでる主人公の「今どきな小説」って感じです。
ちなみに主人公、「ボク」って言ってますが、女の子です。
ボクが、少しみんなと違う考え方をしているのがなんだか歯がゆくて、読んでてちょっとイラっとしました。それに比べてハナがおもしろいくらいはっきりしています。ちょっとズレてるときもありますが。
ハナはハキハキと物事を言う自称アーティスト。ほかにも、優しくて気弱な女装趣味のクロ、他人を思う気持ちが欠けてる最低野郎のシモムラとかがいますけど、、、
うーん、やっぱハナが一番好きですね。
以下、オチに近いこと言いますので、ネタバレが嫌な人はスルーしてください。
主人公みたいな淡白なやつは、キャラとしてはいいけど、好きな人がこんなんだったらヘコむなぁ。
金もらったのも事実だしシモムラとヤッたのも事実だけど、大丈夫、恋愛感情なんてなかったしセックスというよりは道具をつかったマスターベーションって感じのもんだったから、
<うわぁ(´д`)
ハナに問い詰められて、主人公が正直に答えるシーン。
フォローとか強がりじゃなくて、マジだもんな。
本人がそれでいいならいいが、知りたくない事実ですよ。
お気に入りはやっぱ130ページあたりの怒涛のハナの告白シーン。
「私の心がここにあるって気づいてもらえるように努力することしかできないんだよ!」
確かに振り返れば、ハナの「気づいてもらえるような努力」はたくさんありましたね。
片想い伏線がちらほら。
読み返して、ハナの健気さがわかるとちょっと切ないです。片想い中ってこんな感じですよね。
昼を一緒に食べようと誘ったら、人とあう約束があるからと断られ、からかうように問いかけるシーンとか。
/もぉしかして彼氏とか/うんまぁそんな感じ/……えっ/
ボクの無責任な答えに一瞬ハナの声が途切れます。続く沈黙がハナの戸惑いをつたえてきました。
片想い切な〜い(つд`)
あと、父親への憎しみから枯れた花の作品ばかりつくってたハナが、枯れてない花の作品をつくったところ。
「これは憎しみとは別の部分から生まれたモノだから」
作品タイトルは?
「耳鳴りの恋文。ほら、恋をするとなんか耳鳴りみたいな感じがするでしょ?」
「私たちはいつ出逢うんだろう」
むはぁ〜°・(ノД`)・°・
はい、お察しの通り、ハナのとこばかり読んでます。
他にもフラグがたくさんあるので、ぜひ読んでみてください。
主人公のセリフだけ「」がないのがおもしろいですけど、文章は少し好き嫌いがあるかも。
そんなに厚くないので、すぐに読めると思います。
オススメです。