親指Pの修行時代 上巻(松浦理英子)
- 作者: 松浦理英子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2006/04/05
- メディア: 文庫
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<あらすじ>
自殺した親友・遙子の四十九日が済んだある夕暮れ、一実は右足の親指がペニスになるという夢を見て目が覚めた。夢であったそれは、現実のものとなっていた。親指ペニスが出来た一実は恋人である正夫と最悪の別れをし、盲目のミュージシャン・春志と出会い、性を見せ物にしている<フラワー・ショー>のメンバーと出会い、そして……。
以下ネタバレ
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親指がPになるってのはすごい発想ですよね。
主人公・一実は同性愛者ではないため、上巻では百合な展開はありません。
ええ、上巻では。
百合な話があるとすれば、親友だった遙子が、一実に対して特別な繋がりを持ちたかったと思っていたんじゃないかという描写でしょうか。
切ないですよね、どれだけ大切に想っていても伝わらないなんて。
だけどそれは遙子にだけ言えることじゃなく、一実にたいしても言えます。
恋人を愛していても、親友を大切に想っていても、伝わらないんですから。
後半でも、この一実の淡白さが鍵となります。
登場人物は、
ある日親指がペニスになってしまった主人公・一実。
一実を第一発見者にして自殺してしまった親友・遙子。
自分以外の男性器を嫌い、一実の親指Pを認めようとしなかった恋人・正夫。
男女問わず誰とでもセックスをするが、それを仲良くなるコミュニケーションの一種としか認識していない盲目のミュージシャン・春志。<フラワー・ショー>のメンバー
ペニスに小枝のような突起がついている繁樹。
汗や唾液などの他人の体液に対してアレルギーが出る亜衣子。
頬や瞼の肉が垂れており、ナポリタン・マスティフという犬のような容貌をした庸平。
性転換で人工の女性となっているが、女性器の一部を作らずにいる政美。
女性器に歯が生えている幸江。
シャム双生児の弟・慎の下半身だけが腹のあたりから外に出ている保。
メンバー内で唯一体に異常がなく、保の恋人でもある映子。
個性豊かな登場人物がいるのもこの作品の魅力でしょうね。
もう一つの魅力は松浦さんのセリフですよね。松浦さんのセリフってなんだかいいですよ。
「性」について自己表現する監督の芝居を手伝うことになった〈フラワー・ショー〉のメンバー。
だけど、見下したようなその舞台に出るのは、いやいやなもので、繁樹が庸平に「こんなところでの仕事、もうやめようか?」というと、
「どっちでもいいよ、別に。たまには困った奴にも会わないと、この世を楽園と勘違いしてしまうからな。」
と答える。
なるほどって感じですね。
一実が恋とは?セックスとは?などと考える場面が多いため文章がびっちり書かれてるページもあるので、苦手な人には合わないかもしれません。
もし、彼女の足からペニスが生えてきたら、男性はどうするんでしょうね。
正夫のようになってしまうのか、春志のようにしてくれるのか。。。
新装版の上巻には内藤千珠子の解説「親指ペニスの哀しみ」収録されています。政美さんをそうゆう風に見るんだ、と感心してしまった解説でした。
ですがネタバレを含んでる解説なので、上下巻読んでから読むことをオススメします。