奇妙な店長の戯言部屋

百合好きオタによる妄想と百合の戯言な日々

自縄自縛の私(蛭田亜紗子)


自縄自縛の私

自縄自縛の私


百合小説ではなかったのですが、前から気になっていた小説です。
まあぶっちゃけ表紙のイラストと題名に惹かれましたw
でも、先日読んだ官能アンソロ『眠らないため息』に百合小説を寄稿していたので、もしや…くらいには思ったんですが。



以下ネタバレ





「自縄自縛の私」
大学生なころになんとなくインターネットのサイトを見ながら自分の躰を縛ってみた主人公。あることがきっかけでその行為をしなくなっていたが、就職後、自分に部下ができた日に自縛のことを思い出し、その甘美な行為に溺れていく。止めようにも止められない自縛の安らぎに……。



「祈りは冷凍庫へ」
好きでもない男と寝て、相手にバレないように精液入りのコンドームを持ち帰る主人公。コンドームの入った手のひらサイズのビニール袋にラベルを貼り、自宅の冷凍庫に並べコレクションする。コレクションを眺めることで会社での嫌なことを忘れようとするが、ある日……。



「ラバーズ・ラヴァー」
売れないモデルを続けている主人公。そんな彼女の安らぎは、ラバー(ゴム)のスーツに全身を包み込むこと。頭の先から指の先までラバースーツを装着することで、包み込まれているような安心感と痺れるような官能を味わう。モデルを続けるかどうかの不安から逃げるようにラバースーツを身に着けるが……。



「明日の私は私に背く」
何事にも飽きやすい主人公は、その日、自分宛ての過去のメールを読み返していた。結婚をしてもいいと思えた恋人のことを飽きてしまわないためにしてきた、他の男との刺激的な行為を反芻しながら。一回の関係で相手への思いが冷めてしまうため、恋人への想いを冷めさせないようにとしていた行為だったが……。



「ごみの、蜜」
小学生のときのあるきっかけで、ごみ収集車によってごみが潰されていく様に魅了されてしまった主人公。ごみが潰されていくマゾスティックさ、ごみを潰すサディスティックさ。そんな彼女は、中学生の頃に付き合っていた男の子を今でも思い続けていた。もう二度と振り向いてはくれないとわかっていても。しかし……。




どの話も女性の歪んだセクシュリティを表現していておもしろかったです。
こういうフェティシズムあると思いますよね。
特に「ラバーズ・ラヴァー」なんかは、そういうスーツ売ってるんですからね。



それとおもしろかったのが、1話目の「自縄自縛の私」がそのあとの話にちょっとだけ関わっているということ。
TさんとW氏の名前が、他の話によって明らかになるのとか。
短編というよりは、連作になっているのかな?


他の人とは違う形で癒しを求めた女性たち。
興味のある人は是非とも読んでみてください。
官能アンソロ『眠らないため息』の方もオススメです。