奇妙な店長の戯言部屋

百合好きオタによる妄想と百合の戯言な日々

感情教育(中山可穂)


感情教育 (講談社文庫)

感情教育 (講談社文庫)


<あらすじ>
フリーランスのライターをしている理緒は、レズビアンカップルを取材する仕事を受け、とある主婦同士のカップルを調べていた。しかし、片方の主婦の行方がわからなくなってしまい、その主婦と親しくしていた那智という女性に話を聞くことに。運命よりも深く強い出会い――宿命的な出会いをした那智と理緒。同じような境遇で育ったふたりは次第に惹かれ合うが、那智は子供のいる人妻。こんなにも愛しているのに……。





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那智…生まれたその日に病院に捨てられ、施設で育ち、養父母に引き取られる。成長した彼女は、激しく求められると断ることができず、男性にひどい目に合わされることもあった。建築の道に進み、同業者である男性と結婚し、女の子を産む。一見幸せそうな家庭だが・・・。


理緒…ホステスをしている母と、浮気ばかりする父の間に生まれる。父親に遊園地に置き去りにされたり、母親の実家である寺に預けられたりした。父親と母親、二度に渡って親に捨てられたことになる。大学は演劇方面に進み、のちにライターとなる。レズビアンである彼女だが・・・。




第一章は那智の生い立ちが、第二章は理緒の生い立ちが、そして第三章は特殊な環境で育ち、様々な恋愛を経たふたりの出会いが描かれています。





那智が理緒と出逢って間もない頃のシーン。


茶店を出て別れるとき、なぜかあのひとと手をつなぎたくてたまらなかった。これまでたくさんの男とつきあってきたけれど、手をつなぎたいなんて思ったことは一度もないのに。


なんかわかります!
手をつなぎたくてたまらないって気持ちはわかります!




また別のシーンで。


 那智への気持ちを、友情に変換できないかと理緒はずいぶん悩んだことがある。セックスさえしなければ、自分たちの関係は親友と変わらない。親友ならば恋人と違って別れることはない。恋がいつか終わってしまうかもしれないことをおそれなくてもいいのだ。
 でも、そんなことは不可能だった。セックスなしで那智とつきあうことなんてできなかった。自分たちは恋人以外の何者でもなかった。心と体で離れがたく結びついていた。それこそが愛だ。愛とは相手の血を吸って生きることだ。魂は肉体のなかにあるのだ。



ネタバレ防止のため、少し省略していますが、さすが中山可穂さんといった雰囲気ですよね。
長く一緒にいるためには友だちであるべきだけど、誰よりも一番近くにいたいと思えば、恋人になりたいと思ってしまいますよね。





作者本人が代表作と言っているだけあり、すごく引き込まれました。
前世からの宿命的な恋人、離れたくないほど愛してる、なんてなかなか書けるものじゃないですよね。


中山可穂にだから書ける典型的な恋愛小説。
甘々なのに切なくて、読み応えがあってすごくオススメです。




女と女。胸に突き刺さるような至高の愛。
前世から契りあった恋人はあなたですか?
今度こそ永遠に契りあうために、
あなたはそこで待っていてくれたのですか?
那智と理緒。傷つくことにすら無器用な2人が出会ったとき、
魂がふるえ、存在の根源をゆさぶる至高の恋が燃えあがる。
同性同士の愛の極北を描く、
山本周五郎賞受賞作家による傑作長篇



胸がちぎれるような恋愛を感じてください。






追記:
とあるサイト様でみつけた、『IN・POCKET2002年5月号』に載っていた中山可穂さんの「もうひとつのあとがき」だそうです。

感情教育』を読み終わったら、読んでみてください。