奇妙な店長の戯言部屋

百合好きオタによる妄想と百合の戯言な日々

犬身(松浦理英子)

やっと読み終わったよ♪



犬身

犬身


<あらすじ>
「あの人の犬になりたい。そして、人間では辿り着くことのできない心の深みに飛び込んで行きたい。(帯より)」
犬好きの房恵は、小さな頃から「犬になりたい」と願っていた。そんなある日、以前取材させてもらった梓と再会し、梓に飼われたいと思うようになる。房恵は謎のバーテンダーと魂の契約をし、オス犬・フサとなって梓に飼われることになるが、梓の家族には問題があった。自分勝手で思い上がった兄、兄を贔屓する母、無関心な父。フサは梓を守り、幸せな犬生を歩むことができるのか……。




以下ネタバレです。



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「犬になりたい」って言っても、そうゆうプレイじゃなくて、本物の犬になりたいって話ですよ。




「こういうわたしにセクシュアリティというものがあるとしたらそれはホモセクシュアルでもヘテロセクシュアルでもない、これは今自分でつくったことばだけど、ドッグセクシュアルとでも言うべきなんじゃないかと思う。好きな人間に犬を可愛がるように可愛がってもらえれば、天国にいるような心地になるっていうセクシュアリティね(帯より)」





房恵の梓への感情は恋愛感情ではなく、純粋な飼い主への思慕なので、百合かどうかは微妙なところ。
でも、梓に飼われたいと望んでる姿や犬のときの忠犬っぷりは読んでて可愛いです。



お気に入りのシーンは、人間のときに、梓が飼い犬のナツに引綱をつけるときに自分につけるイメージが湧き上がるところとか、梓に会ったときにしっぽがあれば思いっきり振っていただろうってところ。
こうゆう感情をストレートに表現する描写が好き。




逆に嫌いなのは、梓と家族のシーン。特に梓の兄貴はヒドい人間で、読んでるとぶん殴りたくなってくる。
え---!おまえちゃんと話聞いてんのかよ!っていうのはホントにあります。
どんなポジティブもヤツにはかないませんよ。


母親も兄貴贔屓で、梓と兄貴が仲良くしてると嫉妬して梓に冷たくあたるし。梓が助けてって言っても助けに来てくれないのは本当に最低だった。
500ページとちょっと長いんですが、あのムカつく家族がどうなるか気になってしまうので、すぐに読めてしまうと思います。ああゆう自分勝手で、自分が思ってることはみんなも同じ考えだって思ってるヤツいるよね。







そういえば、読んでて、今までの松浦作品とちょっと違う感じした。今までのはなんだか白いイメージがして、現実の大学生を扱ってたりするのに、違う世界の話を聞いてるような感じがしたんですが、今回は色が付いてました。地に足が着いてるっていうか。
それでも松浦さんのきれいな文章はそのまんまで読みやすかったです。
先日紹介した「セバスチャン」の新装版が年内に発売だそうなので、このチャンスにいろんな人に読んでもらいたいな。