マラケシュ心中(中山可穂)
- 作者: 中山可穂
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/05/13
- メディア: 文庫
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<あらすじ>
「愛は、極めねばなりません。極めたら、死なねばなりません。(帯より)」
レズビアン歌人の絢彦は、この世で一番愛してはいけない女性に恋をしてしまった。その女性・泉は、絢彦の恩師である薫風先生の妻。どんなに恋焦がれても叶わない相手。泉に、ずっと一緒にいるために恋を友情にしたいと言われ、絢彦は自分の恋心を押し殺し、泉の代わりに他の女性を抱いた。しかし、触れることさえできない相手への恋に苦しみ、少しでも泉と離れるため、絢彦は海外での仕事を引き受けた。そしてそこで……。
以下ネタバレ
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レズビアン小説といえばこの人でしょう!
初めて読んだのは大学一年のころ。そのときは、性愛シーンが印象的でしたが、四年になった今、読み返してみて、とてもずっしり来ました。
人を愛することがこんなにも苦しいなんて。
本気で恋をすると、身も心もボロボロになりながらも、相手を求めずにはいられないんですね。
『恋がいつか必ず終わるものなら、わたしたちは恋人同士になるのはやめましょう。何も契らず、何も約束せず、からだに触れ合わず、それゆえに嫉妬もない、いかなるときも自由で、平明で、対等な関係のまま、いつまでも離れずに、この世で最も美しい友になりましょう。』
泉が絢彦といつまでも一緒にいたいがために、このセリフを言った気持ちがわかります。
そして、叶わない恋ならいっそ離れてしまいたいと思った絢彦の気持ちも。だから泉からの無意識の恋文は読んでいて愛しさと悲しさを感じました。
そんなにも自分を想ってくれているのなら、どうしてこの手を取ってはくれないのだろう。
『永遠に続く片恋よりは、いっそきっぱりと失恋をお与えください。生殺しよりは、即死を。』
絢彦の、泉への愛しさと苦しみが伝わってきます。
『一生涯、親友でいるより、十日間でいいから、わたしはあなたと恋人同士になりたかった。』
友人としてずっといることを望んだ泉。一瞬でいいから恋人になることを望んだ絢彦。ふたりの気持ちがなんとなくわかるから、どっちが幸せかなんて、決められないですよね。
前半の恋に苦しむふたりの描写は好きです。
でも、後半の漂泊ぐあいは読んでいてつらかったです。
アイドル・マオと絢彦のシーンは泣けます。
作者があとがきで言っていたとおり、マオにはこの道しかなかったんでしょうね。
後悔ばかりが残る苦手なシーン。
絢彦と泉。恋しくて愛しくて、泣き続け苦しみ続けてやっと手に入れた幸せなのに…この急展開は、読んでいて苦しかったです。
一回目に読んだとき、絢彦が嫌いでした。二回目に読んだときも絢彦が嫌いでした。三回目は、絢彦のことが好きになりました。そして絢彦とともに泉に恋をしました。
モロッコの熱にめまいを起こし、二人の愛に息苦しさを感じる作品です。